教育目的の内容です。医療上の助言ではありません。ここに書かれたことを理由に、自分の判断で薬を始めたり、やめたり、変えたりしないでください。その相談は担当医と行います。

30秒でわかること

  • 双極症のうつは、稲妻のように来ることはめったにありません。 霧のように忍び込み、完全に落ちる数日前、ときには数週間前から始まっていることがよくあります。
  • 見る場所は4つ。 体、思考、気分、生活。そこに、9つの早期サインがあります。
  • 最初のサインは、悲しみではないことが多い。 無感覚(アンヘドニア)や、いら立ちのこともあります。
  • 「3のルール」を使います。 3つのサインが3日続いたら、やわらかな不時着を始めます。負担を減らす、感覚への入力を整える、ごく小さく動く。これは出発点の目安です。自分の基準は治療チームと決め、ひとつのサインが強いときは待たないでください。
  • 担当医には早めに連絡します。 穴の底に落ちてからではなく。

まず、安全についてのひとこと

双極症のうつは、危険になることがあります。自分を傷つける考えや、命を終える考えが浮かんでいるなら、どうか聞いてください。それは病気の症状であって、苦しみの解決策ではありません。

日本では、生命や身体に差し迫った危険があるときは 119(救急) に、暴力や事件など警察の緊急対応が必要なときは 110(警察) に連絡してください。死にたい・消えたい気持ちがあるときは #いのちSOS 0120-061-338、つらさや孤立をひとりで抱えているときは よりそいホットライン 0120-279-338 に相談できます(いずれも通話料無料)。危機のページに国別の窓口をまとめています。この記事のなかの何よりも、あなたの安全が優先です。

早く気づくことが、なぜ大事なのか

エピソードは生物学的なもので、何をしていても来てしまうことがあります。でも、エピソードの前には、研究者が前駆期と呼ぶ時期があります。

風邪を思い浮かべてください。喉にかすかな違和感を覚えた時点で休めば、十日ではなく二日で済むかもしれません。無視してマラソンを走れば、肺炎になってしまうこともあります。

目指すのは、その喉の違和感に気づくことです。叫びになる前の、ささやきの段階で。

見る場所1:体

双極症のうつは、多くの人が思うよりはるかに身体的です。頭のなかの悲しみだけではなく、電源が落ちていくような状態です。

サイン1——鉛様麻痺。 郵便受けまで歩くのが、濡れたセメントの中を進むように感じる。朝、重力が一晩で二倍になったかのように、マットレスに押さえつけられて目が覚める。この遅さには精神運動制止という名前があり、重要な赤信号です。

サイン2——睡眠の変化。 ここでは、躁状態とは反対の変化に注意します。十時間、十二時間、十四時間と眠る。三時間昼寝しても、まだ疲れている。あるいは早朝覚醒——普通に寝つけるのに、午前4時に不安のかたまりを抱えて目が覚め、そのまま眠れない。睡眠が三晩続けて大きく変わったら、印をつけておきます。

サイン3——食欲の変化。 多いのは、炭水化物への急な欲求です。パン、砂糖、チョコレート。脳が手っ取り早いドーパミンを探しています。慰めになる食べ物に手が止まらないのは、意志の弱さではなく、生物学的な信号であることがあります。

薄暗い寝室で、重い毛布の下に丸まっている体。

見る場所2:思考

うつは、情報を処理する力そのものを攻撃します。

サイン4——頭の霧。 同じメールを三回読む。会話の途中で意識が遠のく。知性を失ったのではありません。脳が低い電圧で動いているのです。

サイン5——決められない。 メニューを二十分見つめる。着る服を選べない。やることリストを見ても、何ひとつ手がつけられない。小さな選択がとてつもなく大きく感じるとき、実行機能が止まっています。

サイン6——内なる批判者がマイクを奪う。 「失敗した」が「自分は失敗そのものだ」に、「今日は大変な日だ」が「人生はいつも大変だ」に変わるときに注意します。「いつも」「決して」「みんな」と、言葉が全体に広がっていくとき、話しているのはあなたではなく、うつです。

見る場所3:気分

ここは、不意をつかれやすいところです。双極症のある人の多くにとって、いちばん最初のサインは、悲しみではまったくありません。

それはアンヘドニア、喜びを感じにくくなることです。自分と世界のあいだに、ガラスの壁が下りてくる。パートナーを抱きしめても、何も感じない。好きな曲が雑音に聞こえ、好きな料理が段ボールの味になる。その灰色のフィルターは怖いものですが、はっきりした化学的な症状であって、あなたという人が変わったわけではありません。

そして、その近くにある症状、いら立ちにも注意します。特に双極II型では、うつが怒りの仮面をかぶることがあります。誰にでも神経を逆なでされる、咀嚼音に腹が立つ、とにかくドアを閉めてひとりになりたい。ドアを乱暴に閉める十代のように感じるときも、うつの始まりであることがあります。

見る場所4:生活

うつは、静かに世界を小さくしていきます。

サイン7——人を避ける。 電話は留守番電話に回す。返信に三日かかる。服を着ることも人に会うことも無理に思えて、週末の予定を取り消す。

サイン8——延々と画面を見続ける。 何を見るでもなく、何時間もスマホを眺めて、感覚を麻痺させる。

サイン9——身のまわりのことが崩れる。 シャワーを抜く。歯を磨かない。基本的なことが「余分な仕事」に感じられはじめたら、エピソードはすでに始まっている可能性が高いです。

3のルールと、やわらかな不時着

一度に全部を直す必要はありません。ルールはこうです。3つのサインが3日続いたら、やわらかな不時着を始めます。これは万人向けのルールではなく、治療チームと一緒に調整する自分用の出発点です。ひとつのサインが強いときや、死にたい・消えたい気持ちがあるときは、3日を待たずに、今すぐ治療チームか相談窓口に連絡してください。ステップは3つです。

1. 負担を減らす。 この先一週間の予定を、ガラスの球とゴムの球に分けます。ガラスの球は、落とすと割れます。子どもの迎え、仕事への出勤など。ゴムの球は、落としても跳ね返ります。洗濯、食事会、追加の仕事など。ゴムの球は、いますぐ全部落とします。食事会を断る、紙皿を使う、食事を注文する。生き延びるためにエネルギーを取っておくのです。英雄になろうとしないでください。

ガラスの球を持つ両手と、そのそばに置かれた黒いゴムの球。

2. 感覚への入力を整える。 脳が苦しんでいるときに、騒音やまぶしさをぶつけるのはやめましょう。照明を落とし、やわらかい服を着て、穏やかな音楽か静けさを選びます。インフルエンザにかかったときとまったく同じように、自分を扱ってください。

3. ごく小さく動く。 いちばん難しく、いちばん大事なステップです。うつは、動くのをやめさせようとします。そして止まると、セメントは固まっていきます。だから「家を掃除する」ではなく、靴下を一枚拾う。「1キロ走る」ではなく、郵便受けまで歩いて戻る。「食事を作る」ではなく、水を一杯飲む。1パーセントでも、機械を回し続けます。

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合言葉、連絡、そして名前をつけること

調子を崩す前に、合言葉を決めておきます。 落ちはじめると、長い会話は負担が大きすぎます。色か数字を選びます。「今は黄色です」「灰色に感じる」。 それだけで、「うつが始まっている。大切に思っている。でも今はあまり話せない。家事を増やさないでほしい」と伝わります。引きこもりやいら立ちから、関係を守ってくれます。

3のルールに達したら、あるいはそれより早くても、担当医に連絡します。 穴の底からではなく。たとえば、こう伝えられます。「うつエピソードの早期サインがあります。睡眠が十二時間に増えて、手足が鉛のように重いです。これ以上深くならないように、今のうちに何か調整できることはありますか」。 今の小さな調整が、あとの何か月もの苦しさを防ぐことがあります。

内なる批判者に、名前をつけます。 「怠け者」「失敗作」と叫んできても、言い返さないでください。ただ名前をつけます。「今、うつ的な考えが浮かんでいる。これは症状であって、真実ではない」。 ひとつひとつを、不具合のあるサーバーから出てくるポップアップ広告だと思ってください。中身は読まずに、小さな×を探せばいいのです。

うつが、いちばん強く抵抗してくる行動

体は暗さを求めます。でも、脳には光が必要です。

朝の光は、双極症のうつに使える、もっとも強力な道具のひとつです。起きてから一時間以内に、窓辺に座るか外に出て、十分間過ごします。この世でいちばんやりたくないことのように感じるはずです。だからこそ、それが最初に助けになることが多いのです。(多くのエピソードは、睡眠から静かに始まります。双極症のうつ:よくある睡眠の助言が、逆に効いてしまうときで詳しく扱っています。)

頭がはっきりしているうちに、やっておくこと

紙かスマホのメモに、形のある「不時着リスト」を作ります。

  • エネルギーがゼロでも食べられるものを3つ。 ピーナッツバター、プロテイン飲料など。
  • 罪悪感なく断れることを3つ。
  • 「灰色」と送れる人を1人。

すぐ見つかる場所に置いておきます。霧が立ちこめてきたら、そのリストが代わりに考えてくれます。

双極症のうつは重く、つらいものです。でも、道徳的な失敗ではありません。ひとつの気象現象です。そして、どの気象現象もやがて過ぎていきます。雲に早く気づけば、嵐を越えるまで、十分に濡れずにいられます。

自分にやさしくしてください。今できる最善を、ちゃんと尽くしています。